河北潟干拓地につくられた小さな水辺空間に進入してきたカエル

川原奈苗・高橋 久(河北潟湖沼研究所)

 河北潟は、石川県金沢市北部に位置する海跡湖であり、かつては南北に約8Km、東西約4Kmの北陸地方最大の湖であったが、1963年に始まった干拓事業により約3/4が陸地化した。また、河北潟の水は、海水と淡水の混じる汽水であったが、湖の水を灌漑用に使用するために防潮水門が建設され、現在では淡水となっている。
 干拓以前には、河北潟の周辺には、湿地状の入り江、小舟のとおる水路、湿田など周辺には多様な湿地が広がっていた。これらは、河北潟に住む両生類にとって重要な水域であったと思われる。現在では、湖岸線は直線的になり、水路は三面張りに人工化されるなどして、生物がすみやすい水辺空間は少なくなっている。
 また、干拓地は水田地化を目的としたものであったが減反政策により、当初の予定は変更され、現在は大半が牧草地、畑、未耕作地となっている。この数十年の間に、河北潟の水域は、大きく改変され減少した。
 このような状況下で、河北潟の自然の再生を目的に活動している当研究所では、まず湖岸・水辺の再生が重要と考え、昨年の4月に干拓地の一部に水生植物の豊かな水辺空間となる池を人工的に造成した。池は宅地化や改変により絶滅が危ぶまれている水生植物の種と系統を保存するとともに、河北潟に生息する動物の生息環境を提供することも目的としている。
 造成後2年目の段階で、アズマヒキガエル、トノサマガエル、ウシガエルの3種のカエル類が繁殖あるいは定着した。河北潟干拓地および湖岸域に生息する種のうち、ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエルは、現在のところビオトープ池には進入していない。
 過去の河北潟の湿地環境と比較すると、現在の河北潟では、ウシガエルを除くカエル類の生息環境は減少していることが考えられ、ビオトープ池の造成により、水辺を再生することはカエル類の生息環境を保証する上で有効である。河北潟のカエル群集においては、ウシガエルが優占種となっており、ビオトープ池において在来のカエル群集を保全しようとする場合には、何らかの対策が必要となっている。

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