2003カレンダー「河北潟 -水辺植物の面影-」

1月から6月までの上半期と7月から12月までの下半期に分けた両面使用で、書き込み可能なスケジュール帳となっています。壁掛け用としても携帯用としてもご使用いただけます。

・A5判148×210mm(閉じた状態)

・本体価格 800円

各月の写真と解説(一部)

1月 ミズワラビ 
Ceratopteris thalictroides (L.) Brongn. (ミズワラビ科)
 風変わりな一年生のシダ植物で、休耕田や水田の縁などに生育する。ふつうは湿った土地の陸上に生えているが、水中でもよく育ち、熱帯魚の水槽などでは無性的によく殖えるらしい。自然界では秋になると、シカの角のように枝分かれした胞子葉を多数出し、霜がおりる頃には枯れてしまう。
 河北潟の周囲では、まだ各地で見られるが、最近圃場整備された地域の水田ではほとんどみつからない。また、ミズワラビがある水田とない水田は、隣同士の水田でもはっきりと分かれることも多く、農薬の使い方が違うためか、何が違うのか不思議である。(石川県指定:準絶滅危惧、撮影地:金沢市利屋町)
4月 トチカガミ 
Hydrocharis dubia (Blume) Backer (トチカガミ科)
 河北潟干拓地の西側に沿って西部承水路がある。両側をコンクリートで固めた運河のような人工水路だが、河北潟の干拓以後の数少ない水生植物の宝庫となっていて、アサザ、トチカガミ、マツモ、エビモ、クロモなど、河北潟周辺では少なくなった植物が豊富に生育していた。トチカガミは、かつてここではヒシと並んで最も生育旺盛な水草で、夏から秋にかけては、ヒシとともに水面を完全に覆ってしまうほどだった。ところが、ここ数年の間に急速に減ってしまい、いまや消滅寸前の状態である。代わりにホテイアオイやチクゴスズメノヒエなどの外来の種が目立って増えてきた。写真は、西部承水路の中に放置された小舟の中の水溜りに偶然に生き残ったものだが、河北潟周辺で最後に残った貴重な生育地のひとつとなっている。(石川県指定:絶滅危惧U類、撮影地:河北潟西部承水路)

8月 ササバモ
Potamogeton malaianus Miq. (ヒルムシロ科)
 主に流水中に生える水草で、流れの緩やかな場所では笹の葉のような形の浮葉を出す。浮葉はヒルムシロにも似ているが、質が薄く、縦横の葉脈が目立つのが特徴である。
 河北潟の周辺で今のところ1ヶ所だけ分かっているこの場所は、遠目には他と何ら変わらない水田脇のふつうの排水路である。ところが、いざ近づいてみると、アサザは群生しているし、メダカもたくさん泳いでいる、私たちの思うところの「けっこういい水路」なのである。しかし、近くの農家の人にとっては、こういう水草はやはり邪魔で困るのだそうだ。農家の人には貴重な植物だからということで何とか残してもらうように頼んでおいた。(石川県指定:絶滅危惧U類、撮影地:津幡町川尻)

9月 ミズアオイ 
Monochoria korsakowii Regel et Maack (ミズアオイ科)
 名前は青いからアオイではなく、水辺に生える葵の意味で、葉の形が徳川家の家紋にも使われたフタバアオイの葉に似ていることに由来するという。古名はナギ(菜葱)で、昔はゆでて食用にしていたという。一年生の植物で、秋に採った種子を水中で保存し、水が浸るくらいにして播けばよく発芽する。イネを育てるようにすれば栽培は容易である。
 表紙の写真の群生地は、蓮田の間を流れる細い水路に生えたものである。メダカが泳いでいたり、両側の土手にはミズワラビがあったりするいい感じの水路だ。ミズアオイは、最近は道路に沿ったコンクリート張りの側溝など風情のかけらもない場所に見つかることが多く、こういった昔ながらの風景とともにある群生地にはなかなか出会わない。(環境省指定:絶滅危惧U類、石川県指定:絶滅危惧T類、撮影地:金沢市福久町)
10月 サクラタデ 
Persicaria conspicua (Nakai) Nakai (タデ科)
 けっして派手ではないが、気品を感じさせる花である。ただ色が似ているというだけでなく、何か桜と通じる雰囲気をもっているような気がする。姿も形も全くちがうのになぜだろうか。
 何年か前、オモダカが一面に生える休耕田のわきにいっぱい咲いていたのを思い出して訪ねてみた。ところが、久しぶりに行ってみると、オモダカの群生は、圃場整備のためにすっかり埋め立てられており、サクラタデは、道路との間の側溝に、半ば埋まりながらなんとか残っている状態だった。撮影後、群落は工事のため完全に消滅し、結局この写真は群生地の遺影となってしまった。その後、他にないかと探してみてはいるのだが、河北潟の周辺では今のところまだ見つかっていない。(撮影地:内灘町西荒屋)

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