河北潟の環境問題
 
かつては豊かな湖だった河北潟は、現在では様々な問題を抱えてます。
多様な水辺の消失

 干拓前の河北潟には、湖岸に幅広い水草帯が広がり、一方周辺の水路にもオニバスなどの、もともとたくさんの水草が生息していたと考えられます。しかし、そのほとんどはきちんとした調査もされないままに消滅してしまいました。これらは干拓前に存在していた複雑な形状の湖岸や多様な水辺が次々と消失していったことと深い関係があります。
 河北潟干拓に伴って河北潟の湖岸はほぼ100%人工化され、矢板による護岸やアスファルト護岸が施されています。また効率だけを考えた単調で直線的な護岸は波が激しくぶつかるために水草が定着できません。現在の潟に残された植物帯は水面全体のわずか5%の面積にすぎません。河北潟に豊かな植物帯を作り出すには早急な対策が望まれます。

潟面積の消失と淡水化 水質の悪化

 潟面積が1/3以下になったことから、潟への海水の流入が起こりにくくなりました。また、防潮水門を建設したことにより完全に潟内は淡水になりました。かつてのシジミやボラ、スズキなどの汽水性の生物は姿を消しました。多くの水を濾過する動物は少なくなりました。流域からの負荷の増加もあり、河北潟の富栄養化が一気に進行しました。

農業と野生生物の対立

 農業はもともと野生生物を排除することにより生産性を上げてきましたが、河北潟では野生生物と農家との対決が現在でも続いています。蓮根田ではカモ類による食害に対抗するためにかすみ網を張らなければなりません。ノネズミがかじった作物の味は変わらなくても値段が下がります。費用をかけてまで殺鼠剤をまかなければなりません。河北潟の農家が大変苦労されていることです。しかし見方を変えれば、このことは河北潟にはまだ野生生物が豊富であるということを物語っていると同時に、河北潟がいのちを生み出す土地であり、本来健康な作物を作り出す場として優れた地域であることを示しています。

干拓後の変化

 干拓によりヨシを中心とする広大な草原が出現しました。この草原にあたらしい河北潟のメンバーが現れました。その代表はチュウヒです。完陸後しばらくは河北潟はこのチュウヒを始め野鳥の宝庫でした。少しづつ草原が減少し、入植が始まるとともにこれらの種は窮屈に生活するようになりました。最近では、さまざまな水上レジャーや釣りが盛んにおこなわれるようになりました。こうして水辺に人が増えたことは、チュウヒが落ち着いて繁殖する上での障害となっています。
 ブラックバス、ブルーギル、ウシガエル、アメリカザリガニ、セイタカアワダチソウ、これらの外来種は河北潟を覆っています。在来の生物を脅かしています。これらを排除することはできませんが、多様な環境をつくることにより、様々な種が生き残れる工夫が必要です。

直線的な護岸
岸に溜まったゴミ
蓮田の防鳥網に掛かったノスリ
繁茂するセイタカアワダチソウの群落
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