こなん水辺公園にカタツムリが大発生? 

 「こなん水辺公園にいっぱいいる小さなカタツムリはなんていう種類ですか?」という質問をいただきました。金沢市東蚊爪のビオトープ型公園、「こなん水辺公園」に行くと、足下のあちこちに、小さなカタツムリを見ることができます。踏みつぶされた死骸もいっぱい落ちています。このカタツムリの正体はウスカワマイマイ(オナジマイマイ科)です。畑や人家周辺の草地、海岸林などで普通に見られるカタツムリで、丸くて殻が薄いのが特徴です。こなん水辺公園の草刈りの跡やコンクリートのある場所にいくと、とてもよく目立っています。

 こなん水辺公園では、どうしてこんなにウスカワマイマイが、目立つのでしょうか?

 ウスカワマイマイは、畑地に発生して果実やキャベツなどを好んで食べるため、農業害虫として防除対象となっています。こうした点から被害についての記録もいくつか残っていて、条件によっては、大発生をする種であることが考えられます。こなん水辺公園においてウスカワマイマイが目立つのは、第一に個多数が多い、もしかしたら大発生している可能性が考えられます。11月1日にこなん水辺公園の駐車場西側のコンクリートとアスファルトの裸地で見つけた個体をざっと数えたところ200個体以上が見られました。ある程度の密度で発生していることは間違いないようです。
 このように個体数が多くなったのはどうしてでしょうか?いくつかの理由が考えられますが、ひとつには、ウスカワマイマイの餌が豊富であることが考えられます。ウスカワマイマイはきわめて広食性(いろいろなものを食べる)であることから、こなん水辺公園にも餌となる植物がたくさん存在していることが考えられます。
 同時に、単に餌があるというとだけではなく、こなん水辺公園にはウスカワマイマイの天敵が少ないということも考えられます。こなん水辺公園は造成されてまだ3年ほどしか経っていないため、生物群集が貧弱である可能性があります。現在のこなん水辺公園は、特定の種ばかりが目立つ傾向があり、たとえば水の中では、今、ヌマエビやアメリカザリガニがよく目立っています。少し前は、メダカとウシガエルが目立ちました。生息する種が少ないために、複雑な種間関係が欠如し、安定した生態系が形成されていない可能性が考えられます。そのため、特定の種だけが一時的に増えているのかも知れません。
 同時に、防除をおこなっていないことも関係しているものと思われます。畑では常に防除対象となる種であるだけに、農薬の撒かれることのない、人工草地であるこなん水辺公園は、ウスカワマイマイの増殖に恰好の環境となっている可能性も考えられます。ウスカワマイマイの顕著な発生は、現在のこなん水辺公園が、ビオトープであると同時に、人工の造成地であることを気づかせてくれます。少なくともしばらくの間は、生物相へのある程度の関与が必要な環境であることを示唆しています。

 ウスカワマイマイが目立つ理由の2つめとして、ウスカワマイマイが、越冬等の移動のために目立つ場所にでてきている可能性も考えられます。このことからは、適当な越冬環境や休眠場所が、こなん水辺公園には少ないという可能性も考えられます。さらには、こなん水辺公園には、多様な環境要素が少ないことや特定の環境が欠乏していることが示唆されます。

 ウスカワマイマイの現状から、今後のこなん水辺公園が、豊かな生物の生息環境となることを目指すうえでの、改善方向や管理のあり方も見えてきます。

(生物委員会 高橋 久)

   
こなん水辺公園によく見られるウスカワマイマイ。オナジマイマイ科の中でも人工的な環境に進出している種のひとつ。(11/1撮影)   越冬場所を探してか、側溝に集まってきた個体。石ころのように見えるひとつひとつがウスカワマイマイ   白墨でいたずら書きをしたように見える白い線は、ウスカワマイマイが這った跡。コンクリートの上に点々と小石のように見えるのがウスカワマイマイ

(配信日2003年11月1日)