2002カレンダー「鳥たちの河北潟」に掲載された写真のエピソード

 現在販売中の2002年カレンダー「鳥たちの河北潟」には、河北潟の野鳥の姿を撮影した写真が多数掲載されていますが、それぞれの写真には、さまざまなエピソードが隠されています。河北潟湖沼研究所通信『かほくがた』7−2号の記事からそのいくかについてご紹介します。

カレンダー「鳥たちの河北潟」に掲載された写真

 2002年カレンダー「鳥たちの河北潟」では、河北潟の鳥たちの活き活きとした表情が撮影されています。河北潟は四季を通じて多くの野鳥が訪れる、すばらしい野鳥の宝庫です。しかし、現在の河北潟の鳥たちをめぐる状況は必ずしも楽観的ではありません。このカレンダーを通じて野鳥に興味を持った方が河北潟を訪れたときには、鳥たちとの出会いとともに、河北潟の様々な現状に気づかれることとと思います。ここでは、写真に隠された裏話をご紹介しながら、河北潟の野鳥をめぐる状況について考えたいと思います。

2月:青空が開き、風が止み、積乱雲が立つ時、河北潟は光の祝祭になる。チュウヒは輝きをまとう

 上半期の表紙や2月の写真では枯れたヨシ原の上を飛翔するチュウヒが、また7月は青々としたヨシ原の中のコヨシキリが映し出されています。現在でも河北潟のヨシ原は、多くの野鳥に住みかを与えています。しかし、干拓が完了したころの70年代〜80年代に比べると干拓地のヨシ原はだいぶ減少しました。写真のような風景も今では、なかなか見ることができなくなりました。

6月:怒濤の寄り、怖いもの知らず、チュウヒの一生も、夏も、始まったばかりだ

 6月のチュウヒの雛は、ご覧いただいて判るとおり、撮影者が巣に近づいたところ雛が興味を持って近寄ってきた場面です。当初この写真を採用することについては、慎重論がありました。ちまたに野鳥への影響を考慮しない近接写真が多いためです。今でも、カメラマンがタカの巣の近くで粘ったために繁殖を中止してしまったという話を聞くことがあります。また野鳥の目にストロボ撮影の閃光がくっきりと写っている写真も時折見かけます。こうした写真との違いは雛の表情をご覧いただけば判ると思います。撮影者の中川さんは永年、河北潟でチュウヒの生態を観察してきた方で、この雛の親たちの行動も熟知しています。それゆえに、繁殖に影響を与えず短時間でチュウヒの雛の無邪気な表情を撮影することができました。大胆なようですが注意深く撮影された一枚です。チュウヒへの親近感を持つ方が増えることを願い、あえて近接撮影の写真を掲載いたしました。

12月:雲は光に溢れて暗く、雪はやんでいる。チュウヒは冬を睨む

 12月の写真にはチュウヒの猛禽類らしい精悍な表情が捉えられていますが、この写真はフィルムの下側と右側を大きくトリミングしたもので、少し解像度が荒くなっています。どうしてもチュウヒの姿とともに湖岸に溜まっているゴミが映ってしまうため、ゴミの部分を切り取ったためです。最近はクリーン作戦などでゴミが減ってきましたが、チュウヒが止まるような目立たない場所には、まだゴミがたくさん残っています。チュウヒの眼光鋭い表情も、周辺にゴミが映っていたのでは締まりません。
 今回写真を提供いただいた中川富男さんについては、あとがきの「河北潟干拓地の魅力」をお読みいただきたいと思います。中川さんの河北潟での活動や人となりが伝わる文章です。研究所主催の自然観察会では、いつも季節ごとの河北潟の見どころを教えていただき、現地での解説もしていただいています。今回の企画でも、快くとっておきの写真を提供していただきました。
 それぞれの写真の下に付けられている説明は、研究所生物委員会の三浦淳男さんによるものです。中川さんと同じく、河北潟で鳥を追いかけている人です。写真に映し出されている鳥たちの気持ちが心に伝わり、河北潟の季節ごととの情景が目に浮かぶようなすばらしい説明です。 (金沢事務局・高橋 久)

「かほくがた」vol.7-2より