2008年河北潟カレンダー「消える風景 ギリギリ河北潟」ができました

 2008年カレンダーのテーマは、消える風景です。最近、河北潟から失われた風景やめずらしくなってしまった風景、保全したい風景などを毎月掲載しています。サブタイトルを「ギリギリ河北潟」としました。カレンダーのタイトルとしては思い切ったものですが、このカレンダーをみた方々とともに、河北潟の現状を考えていきたいと思い、このようなタイトルとしました。1部630円(消費税込み)で販売します。

【模索する河北潟・ギリギリは可能性】
 河北潟は人口45万人の金沢市の中心部から10kmしか離れておらず、また対岸は人口2万数千人の内灘町に面しています。都市郊外にあって人口増加が著しい平野部に位置しています。一方で、河北潟は石川県最大の湖で、渡り鳥の飛来する重要な湿地としても選定される貴重な自然環境です。同時に干拓地と河北潟の周辺は、県下有数の農業生産の場ともなっています。自然と半自然(農地)、そして人工、それぞれが大規模であり、また相矛盾する要素が集約している場所が河北潟地域です。
 こうした河北潟地域において、それぞれの要素を守り、あるいは発展させていくことは簡単なことではありません。自然を守ることと自然とのふれあいをつくること、野生生物を守りながら農業をおこなうこと、農家(農業)と住民(高次産業)との関係も微妙です。
 こうした関係のギリギリの中にいて、変化すべき方向を模索しているのが、現在の河北潟ではないでしょうか。河北潟自体がおそらく数千年程度の寿命であり、自然環境としては極めて寿命の短い自然環境ということができますが、それでも自然状態での変化は緩慢であり、野生生物はそうした変化に適応してきました。河北潟の潟縁に定着した人間の活動も緩やかであり、潟・野生生物・人間の三者は、割合に調和を守ってきました。河北潟の急激な変化は、この数十年の出来事です。社会の急速な発展は、潟と野生生物を人に従属させようとしました。そのために潟と人のバランスが崩れました。環境と人との関係がゆがみ、断裂しました。
 河北潟はギリギリの状態にあります。しかし、ギリギリであるということは、単に危機であることを意味しているのではありません。人と環境との新しい可能性が生み出される岐路にあることを示しています。河北潟において人も動物も環境も守るという可能性は、ギリギリの中から見出されるのではないかと思います。(高橋 久 河北潟湖沼研究所理事)

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(配信日:2007年11月27日)