河北潟のアサザの遺伝解析の結果について
    
−東大上杉龍士さんからの情報提供

 水に葉を浮かべる浮葉植物や、水の中に生える沈水植物は、全国的にその生育場所が少なくなって、多くの種が絶滅を危惧されています。アサザは国のレッドリストの絶滅危惧U類に指定されている浮葉植物です。河北潟地域には、現在数カ所のアサザの生育場所があります。
 アサザの花には、雌しべが短く雄しべが長い短花柱花と雌しべが長く雄しべの短い長花柱花の2つのタイプがあり、新しい種子をつけるためには、この両方の花が必要といわれています。ところが河北潟地域では今のところ短花柱花しか見つかっていません。したがって河北潟のアサザは種子を付けず、毎年越冬した冬芽が発芽してその系統を保っていると考えられます。
 河北潟地域のアサザが自らは種子を付ける能力をもっていないとしたら、今後何らかの原因で冬芽が越冬できなかった場合や、夏の間に群落が枯れてしまったりした場合、埋土種子が存在しないため、新たな発芽が期待できず、消滅する可能性が高いことが考えられます。さらにもし、河北潟のアサザは全て遺伝的に同一のクローンであり、遺伝的な多様性が存在しない場合は、今後何らかの対策無しに、河北潟のアサザが種子繁殖をすることは期待できません。将来にわたる保全も難しくなります。
 アサザの遺伝的な多様性について興味が持たれるところですが、このたび、東大大学院生の上杉龍士さんが河北潟4地点から持ち帰ったアサザのサンプルの遺伝解析をおこなった結果を情報提供いただきました。
 遺伝マーカーとして、マイクロサテライトマーカーを用いて分析した結果、河北潟東岸の2地点と南の1地点は同じクローンであるという結果がでましたが、西部承水路から採集したアサザは、他の3地点とは異なるクローンでした。河北潟には最低2つのクローンがあることがわかりました。
 西部承水路は昨年のニュースでもお知らせしましたが、ホテイアオイが大増殖が確認されるなど、アサザを保全する上では厳しい状況にあります。このたび、上杉さんの研究成果により、西部承水路のアサザがきわめて貴重なものであることが示唆されています。緊急の保全対策が求められます。

 
昨年6月の西部承水路のアサザの状況   河北潟のアサザの花(昨年5月撮影)

この度貴重な情報提供をいただき、さらにニュースへの引用を快くご承諾いただいた、東京大学の上杉龍士さんに深く感謝いたします。