「チュウヒ・サミット2006」の報告

 2006年6月24日午後に、名古屋市の愛知大学車道キャンパス2号館において、わが国に生息するチュウヒの実態と保全の問題を論じる第一回の「チュウヒ・サミット2006」が開催されました。全国から約90人が参加されて、このような地味なテーマの会合としては盛会でした。
 この会は日本野鳥の会三重県支部、愛知県支部において名古屋鳥類調査会が主催して行われたもので、次のようなプログラムによって実施されました。

1.基調講演「河北潟干拓地の変遷」 河北潟湖沼研究所  大串龍一

2.各地からの報告

「仏沼におけるチュウヒの繁殖番数の変化」(青森県仏沼干拓地)
   北里大学自然界部  多田英行

「渡良瀬遊水池におけるチュウヒの生息状況と環境利用」(栃木県渡良瀬遊水池)
   日本野鳥の会栃木県支部  平野敏明

「木曽岬干拓地チュウヒの繁殖調査(2002〜2006年)」(三重県・愛知県木曽岬干拓地)
   名古屋鳥類調査会  森井豊久

「大阪府におけるチュウヒの繁殖状況」(大阪府堺市干拓地)
   日本野鳥の会大阪支部  納屋 仁・清水俊雄

「河北潟干拓地および北陸におけるチュウヒの繁殖と生態」(石川県河北潟干拓地)
   日本鳥類標識協会  中川富男

「北海道苫小牧市弁天沼周辺におけるチュウヒの繁殖状況」(北海道勇払原野)
   (財)日本野鳥の会自然保護室  浦 達也・加藤和明

(これはプログラムの順ではなく、実際に発表された順番)

3.パネルディスカッション

4.チュウヒサミット2006提言

 チュウヒについての初めての総合的なシンポジウムの結果、全国の主な生息地6箇所の現状が報告されました。渡良瀬遊水池以外の5ヵ所では繁殖が確認され、これらを総合して、日本全国で30ないし40ペアが繁殖していると推定されました。まだ調査されていない繁殖地もあると思われますが、未記録の繁殖地がこれとほぼ同数あるとしても、日本全体で100ペア以下という現状からして、チュウヒは種の保存上からいって、イヌワシやクマタカよりも絶滅の危機に瀕しているものと思われます。とくに平地湿原のように人間の手が入りやすい環境では、地域全体としての保全対策を速やかに進める必要があるでしょう。また、現在のチュウヒの生態について、繁殖場所や餌(鳥や魚が多くなっている)なども報告されました。
 翌25日の午前には、愛知県と三重県にまたがる木曽岬干拓地において、チュウヒをはじめ野鳥の観察会が行われました。チュウヒの雌雄の餌渡しが見られるなど、興味ある自然が観察できました。

報告: 大串龍一

(配信日:2006年7月12日)