石川県内唯一のエサキアメンボ生息地が消失

 エサキアメンボはヨシの生えている水辺に生息する昆虫ですが、全国的にヨシ原が消失している中で生息数の減少が指摘されています。そのため、全国的にはレッドリストの準絶滅危惧種として掲載されています。石川県においては、このエサキアメンボは今のところ1カ所しか生息場所が見つかっておらず、県レッドデータブックでは、もっとも絶滅が危惧される絶滅危惧T類にリストアップされています。
 このエサキアメンボが生息していた唯一の場所は、河北潟の東側にある津幡町漕艇場に沿った農業用排水路でした。しかし、この場所は最近の工事により消失しました。

エサキアメンボが生息していた、かつての農業排水路。ヨシが中央部にまで侵入していた(99年11月)。   現在の状態。用水路は埋め立てられ周辺植生も刈り取られた(2001年4月)。この場所は駐車場になる予定。

 私たちは、この場所にエサキアメンボが生息すること、また他に生息場所が見つかっていないことを津幡町に知らせ、保全のための対策を申し入れてきました。その結果、約1/3の場所を現状で維持することとなりました。しかし、保存されることとなった場所は、エサキアメンボが生息していた水路の続きでありますが、まだその場所ではエサキアメンボは確認されていません。

工事区間の奥に現状維持されることとなったエリアが見える。この区間にはまだエサキアメンボは確認されていない。

 エサキアメンボの生息していた水路には、ヨシが繁茂しすぎていること、水が汚くゴミが多く捨てられていることなどから、津幡町としては、管理を続けていくことがコスト的に困難であり、当初全面的な埋め立てを計画していたものです。一部を残したことは、当初の計画よりは評価できますが、本来、保全するのであれば、1)既にエサキアメンボが確認されている場所を中心に保全エリアをつくる、2)ゴミを捨てないように住民の理解を促し、さらに住民参加の下で適正な管理をおこないながらエサキアメンボを保護する、等の方法があったはずです。しかし、今回の方法は、工事計画にあまり関係のない場所をとりあえず保全区域としたものにすぎず、真剣にエサキアメンボの保全を考慮したものであるとは、いうことができません。
 たしかに、たかが1cmほどのアメンボではありますが、こうした生き物を保全することが持つ意味をもっと議論すべきであったと思われます。また、このような事例からは、津幡町や石川県においては、野生生物保全に対しての行政の問題意識は、変化はあるものの、まだまだ遅れているといわざるを得ません。
 エサキアメンボは、ふだんヨシの根方に潜んであまり動かず、目立たない種類であるため、他にもまだ見つかっていない生息場所が存在する可能性がありますが、現状では、唯一の生息場所が消失したことになります。
 河北潟湖沼研究所生物委員会では、現状維持されたエリアに今後エサキアメンボが生息することができるのか、また周辺に残された生息地があるのかを調査していきたいと考えています。
 この経過を知りながらも、十分に対応をとることができなかったことに対しての自らの反省の意味も込めてニュースとしました(文責、高橋久)。