河北潟は上流と下流の水位が逆転する閉じた湖

 「大宮川水門でごりの稚魚が苦しんでいます」という投稿を金沢市の河合雄二さんよりいただきました(投稿の全文はこちら)。さっそく、7月14日に現地を訪ねました。

 大宮川の河口は常に水門で完全に閉じられていて、水量が増加すると横の排出口から一方的に潟に向かってポンプで排水されています。たくさんのトウヨシノボリがその排出口の下流側のコンクリートの垂直の壁面に張り付いていました。排水口からは、比較的流れの速い水流が確認でき、トウヨシノボリは水流に逆らうよう張り付いています。遡上するためか餌を求めて集まっているのかわかりませんが、かなりの密度で確認できました。

 水門で閉じられた大宮川の水は淀んでいて透明度はきわめて悪く、河北潟よりも水位は低い状態でした(写真)。ここでは下流よりも上流の方が水位が低くなっています。水門がなければ下流から上流に水が流れていきます。
 河北潟の水位は防潮水門により+40cmの状態に管理されています。そのため樋門で区切られた流域のいくつかの小河川は、潟より水位が低く、通常は水は流れず溜まっているだけです。このため水質はとても悪い状態です。これらの川の水はポンプで強制的に汲み上げられ、潟に流されます。

 河北潟は、その下流の大野川によって日本海とつながっていますが、大野川と河北潟は防潮水門によって区切られています。河北潟の水は水門を越流して大野川に流れるため、逆流はできないようになっています。このように河北潟は、上流と下流が水門によって遮断されるきわめて閉鎖的な水系となっています。水はポンプや越流によって強制的に一方向へ流されるため、生物の遡上がきわめて困難な構造となっています。日本中の水系に共通する問題ではありますが、河北潟も同様で、このトウヨシノボリはその問題の一端を示しているものといえそうです。

 
大宮川河口は水門により完全に閉鎖されている。写真は河北潟側より見たところ。   水門の上からみたところ。下流の河北潟側(写真右)の方が上流の大宮川側(写真左)より明らかに水位が高い。
     
 
水門の排水口。一旦ポンプで汲み上げられた川の水は、ここから潟に排水される。水流は河北潟においては通用みられない早さである。指を差しているコンクリートの壁面にヨシノボリが付いていた。   コンクリート壁面に付着していた多数のトウヨシノボリ。たしかにこんな光景はあまり見たことがない。