ハンノキは残った −ちょっといい話−

 金腐川と大宮川は接近して河北潟に流れ込んでいます。この2つの川に挟まれた河口の州には、ハンノキが1本だけ育っています。この付近には、その他には野生のハンノキは見当たりません。低地の湿地に自生するハンノキは、もともと河北潟とは縁の深い樹で、水田のはざ木として利用されたり、川縁の風景をつくるのに一役買っていました。ところが水辺の護岸や水田の整備、稲作の変化などにより、ハンノキは切られたり、自生地自体がなくなったりして、河北潟周辺には、近頃では、ほとんどみられなくってきています。
 最近、大宮川の排水を良くするためにこの河口州の一部を取り除く作業がおこなわれることとなりました。河北潟湖沼研究所生物委員会のメンバーが県の自然保護課を通じて問い合わせたところ、このハンノキを含む一体を取り除く予定であるとのこと。さっそく工事をおこなう県の土木部の担当者と話し合いをおこない、この貴重なハンノキを残すようようお願いしました。県土木部金沢工事事務所には、誠実に対応していただき、このハンノキの重要性をよく認識していただくことができました。現地でもハンノキを確認するとともに、この木の周りを残して土砂の取り除きをおこなうように計画の変更を検討することを約束してくれました。
 工事は終わりましたが、このハンノキは河口州に残され、元気に葉を広げています。来年の河北潟カレンダー「河北潟の希少植物」にも、元気な姿が登場する予定です。
 小さな成果ですが、行政とNPOの連携のちょっと良い話かもしれません。

 
6月28日現在、ハンノキは元気に育っています。   土砂の取り除き工事後の様子。奥に中州が残るような配慮もされている。