「河北潟将来構想」発表
1999年10月

このたび河北潟湖沼研究所生物委員会が、「河北潟将来構想」パンフレットを発行いたしました。これは、河北潟の自然環境保全と野生生物保護についての提案をまとめたものです。
河北潟の過去から現在までの環境の変化を調査した結果を基に、保全すべき環境と改良すべき環境を抽出し、干拓地を農地としていかに野生生物との共存空間としていくのかを提案しています。
広域の環境改善の基本計画を練る上で、行政や企業の枠にとらわれない環境NPOの役割は重要です。今回の「将来構想」は既存の行政の所轄枠などにとらわれない自由な発想をもって作り上げました。

 このパンフレットの概要は、当ホームページの刊行物のコーナーで確認することができます。また、パンフレットは無料で配布しています。必要な方はメールでご請求ください。

「河北潟将来構想」をまとめるにあたって留意した点

●河北潟の自然環境の現状を正確に把握する。
 河北潟はもともと広大な汽水湖でありましたが、干拓によりその環境は一変しました。現在の河北潟を評価する場合、すでに自然環境は失われてしまったと見ることもできます。そしてもとの汽水湖に戻すのがもっとも河北潟の再生にとって良いことであるという意見もあります。私たちは、河北潟の現状を詳しく調べることによって、干拓・淡水湖化により失われたものを客観的に評価すると同時に、干拓事業により新しく生じた環境においてどのような生物群集が作られているのかを丁寧に調べました。そして現在の環境の中にある優れた点を抽出するように努めました。調査結果については、別に資料編をまとめる予定です。
●河北潟が農地であることを重視する。
 河北潟の現在の環境は農地であることにより維持されている側面が大きいと思います。農地であることにより大規模開発から守られてきたし、農地であることによって野生生物の生息できる余地もあったと考えています。ときに農業と野生生物は対立しますが、私たちはそうした緊張関係を持続しながらもどこかで協調していくことが農業にとっても、農作物を食べまたやすらぎを受けている周辺の住民にとっても大切なのではないかと考えています。私たちは基本的に干拓地を農地であることを前提に計画を立てました。
●再生の目標の設定?潟と生活の接点を取り戻す?
 私たちは河北潟を自然公園と位置づけることで豊かな河北潟を再生しようと考えています。河北潟の再生を考える上で、どの時点の河北潟の環境を目標にすべきかを議論しました。そして、とりあえず干拓前の状態を目標に掲げました。それは河北潟に様々な生物があふれ人々がその豊かさを享受していたころです。私たちは単純に自然条件だけでなく、河北潟の干拓前における住民の暮らしを含めた河北潟の再生ということを第一に考えました。現在の異なった自然条件のもとでも、どうしたら潟と住民の生活の接点を取り戻せるのかを念頭に置きながら計画案を練りました。
●実現可能な案を作る
 技術的な問題での解析に不十分さは残りますが、河北潟の現在の形を大きく変えるのではなく、実現可能な改良を行うことに重点を置きました。また、保全区域の設定などゾーンニング、生物生息環境のネットワーク化などの考え方を導入しています。


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