河北潟周辺のミサゴの営巣を調査
   −金沢東部環状道路の計画路線と重なる巣も確認−

 ミサゴは魚を主な餌とするタカの仲間です。河北潟には餌である魚を求めて多くのミサゴが飛来しますが、これらのミサゴは、河北潟に近い津幡町や金沢市の丘陵地に巣を作り、河北潟との間を行き交います。河北潟湖沼研究所生物委員会では、今年から、河北潟と周辺の里山をつなぐ鳥類であるミサゴの調査を開始しました。今月の15日にも、メンバーによる合同調査がおこなわれました。
 私たちがミサゴに注目しているのは、ミサゴが餌場としての河北潟と、繁殖場所としての森林の両方を必要とする鳥であるからです。たとえ河北潟の環境が維持されても、森林が開発されたりするとミサゴは棲めなくなります。逆に河北潟周辺の里山が維持されても、河北潟の水環境が悪化して魚類の生息数が減少するとミサゴの生息が困難になります。もともと河北潟自体の水環境も流域の森林環境との関係が非常に深く、河北潟の水環境の問題を考える上で上流の環境を無視することはできません。ミサゴは河北潟とその上流部の自然環境を結びつけて考える上で、代表的な指標種となる生物です。ミサゴを見守ることで、河北潟を流域を含めた自然生態系として捉えなおし、河北潟の環境問題をよりグローバルな視点から取り組んでいこうということが、私たちがミサゴの調査を始めたきっかけです。
 これまでの調査で河北潟周辺で20巣以上の巣が確認されましたが、それらの中には今後、金沢市の山裾を横断することになる金沢外環状線東部環状道路の予定路線と重なるものがあることがわかりました。河北潟湖沼研究所生物委員会では、今後とも調査を継続してミサゴの営巣状況を見守っていきますが、段階的にデータを公表しながら、ミサゴの保全のための提案をしていきたいと考えています。

4月15日に実施した営巣状況調査。ミサゴが営巣している場所は金沢市近郊の丘陵部でも比較的静かなところが多い。今後これらの丘陵を横断するように東部環状道路が建設されることからミサゴの営巣への影響が懸念される。