河北潟で作物を生産されている方々の声を集める。
    −干拓地農家へのアンケートを開始−

 河北潟湖沼研究所友の会ボランティアスタッフが中心になって、河北潟干拓地に入植されている農家の方へのアンケート活動を開始しました。河北潟の環境保全を進める上では、干拓地の適切な利用が重要です。したがって干拓地で農業をおこなっている方たちは、河北潟の環境保全の中心的役割を担っています。ところが、干拓地農業は土地の性質や農業政策に伴う問題、さらには鳥獣被害など、現在さまさまな困難を抱えています。河北潟農業の実状を把握し、問題の解決策を図っていくことが今後ますます重要になっています。そこで、干拓地農家の方々に聞き取り調査をおこなことにしました。まだ始まったばかりですが、何人かから聞き取りを行うことができました。その一部が、今月発行された「河北潟湖沼研究所通信−かほくがた」に掲載されています。以下に記事を紹介します。

   
 

果樹園内に鶏を放し飼い。餌は、おから、糠、ヒエ、塩を混ぜたもの。
おいしそうな餌を食べに、たくさんの鶏が集まっている。

 
     
干拓地の金沢市湖南町の一角で、広い敷地を元気に走り回っている鶏を見ることができます。昨年の6月から鶏の放し飼いを始められた山岸松吉さんにこの度お話を伺うことができました。放し飼いは、鶏肉や卵として販売するためではなく、鶏に雑草を食べてもらうことが目的で始めたそうです。河北潟の土壌は粘土質で水はけが悪く、栄養分に富むため、草が生い茂ります。農家の方々は草刈に大変苦労されています。山岸さんは、約4年前から葡萄の栽培を続けており、その果樹園内に生い茂る草を鶏に食べてもらい、有効に働かせようと考えられました。
昨年の葡萄の生産は、春に霜が降りたことから、育ちが悪くて売り物にならず、また大雪で施設が潰れたこともあって、費用がかかりすぎたそうです。一方、葡萄が良好にできた年ではムクドリの大群が飛来し、すべて食べられてしまいました。まだまだ試行錯誤の段階だと話されていました。
設備費や維持管理費に莫大な資金を要し、さらに野生生物による食害がのしかかる事態。生産性があがらない中で農業を続けることは非常に困難な状況にあります。
作物を生産している農家の方々が抱えている問題や負担を個人のものとせずに、地域ぐるみで農業を守ることはできないものでしょうか。広大な農地が広がる河北潟の自然環境を保全するためにも、安心で健康な食を得るためにも、良好な農業が持続されていくことが望まれます。農業を続けている方々がかかえている問題をお聞きして、様々な保全対策につなげていけたらと考えています。
(生物委員会 川原奈苗)