河北潟周辺の水路調査を実施(2002年度第1回目の調査の報告)

 河北潟湖沼研究所生物委員会では、河北潟と周辺の生物の生息状況調査をおこなっています。今年も第1回目の調査を4月14日に実施しました。今回は、西部承水路と木越町から大場町にかけての水田の水路の調査をおこないました。また、21日には西部承水路の補足調査をおこないました。まだ水草が十分に育っていないため、予備的調査としての大まかな観察でしたが、悪化しつつある河北潟周辺の水路の状況をあらためて認識しました。

西部承水路の状況

 河北潟のもともとの西岸域は、西部承水路という比較的広い水路として残されています。ここでは数年前まで、アサザやトチカガミ、マツモの群落が広い範囲でみられましたが、今回の調査では、トチカガミは1か所、アサザは3か所、マツモは1か所のみの確認でした。一方、数年前にはみられなかった外来種のホテイアオイの枯死した群落が広範囲に認められました。これらは昨年夏に大群落をつくっていたものです。また、越冬して生き残っている株も2か所で認められました。ホテイアオイが越冬するのはここ2−3年の傾向です。枯死せずに越冬する個体があることによって、近年の夏季のホテイアオイの爆発的な増殖が起こっているようです。ヒシの群落は、1か所のみでしたが広範囲に芽生えが確認されました。マツモは1か所のみの確認に留まっています。まだ冬芽が伸びてないため、今後確認が増えることが予想されます。
 西部承水路近くの水田は現在ほじょう整備をおこなっていますが、以前ほじょう内の水路に確認されていた、アサザやクロモ、マツモ、エビモは消滅しました。またサクラタデの群落が1か所だけ残っていましたが、この群落も消滅の可能性があります。

 
西部承水路に古い舟が捨てられ、水が溜まっていたところにトチカガミの芽生えが確認された。この日、西部承水路で確認することのできた唯一の自生地であった。   他の植物との競争から逃れることができたためであろうか。この舟の水溜まりのなかからは比較的多くのトチカガミの冬芽を確認することができた。皮肉なことに、この人工物がトチカガミにとってのノアの箱舟になった。
     
 
写真右側が整備されつつあるほ場。その脇の水路にサクラタデの群落が確認された。   整備の影響で土砂に被われ消滅寸前のサクラタデ群落(写真中央の枯れたように見える部分)。河北潟西岸域にはここの他にはまだサクラタデの群落を確認していない。

木越町から大場町の水路

 ここには、まだコンクリート化されていない水路が残っています。ここではヤナギモ、ショウブマツモなどの群落が確認されました。周辺にはケリやタシギ、ヒバリ、アオサギ、コサギ、キジなどの野鳥も観察され、とりあえずは野生生物の生息環境が残されている状況です。

 
土堀の水路には両岸にショウブの群落が確認された。ここには、まだ昔ながらの風情が残っている。   水路の中にヤナギモの群落が確認された。近年では、河北潟周辺ではまれにしかみることができなくなった。
     
 
ドブガイと思われる、大型の二枚貝。これらイシガイの仲間も、いつの間にか少なくなった。   水路の脇には、タガラシの瑞々しい群落が広がっていた。