水田はシギ・チドリの休息場所、休耕田は湿性植物の生育場所(河北潟水路調査の第2回目の調査報告)

 河北潟湖沼研究所生物委員会では、河北潟と周辺の生物の生息状況調査をおこなっています。第2回目の調査は5月3日に実施しました。今回は、東部承水路の東側、津幡町潟端から宇ノ気町内日角地区にかけての水田の水路の調査をおこないました。また、津幡町漕艇場横の埋め立てずに残された排水路(参考記事)の調査もおこないました。今回の調査地の多くの区域が、最近大規模なほじょう整備や排水路整備をおこなった場所であるため、水生生物の生息状況は良好なものではありませんでした。しかし、田植え作業中の水田には、多くのシギ・チドリ類が確認されました。河北潟とその周辺が重要なシギ・チドリの飛来地であることがあらためて確認されました。

水田における野鳥の確認状況

 津幡町潟端から舟橋のほ場の農道を移動しながら感じたことは、シギ・チドリ類などの野鳥が頻繁に確認されたことです。このあたりは、ほ場整備も終わり、農道や水路が綺麗に整備されていることから、一見野鳥などの生息場所としてはふさわしくないように感じます。しかし、砂利の農道にはコチドリが営巣するための小さな穴を掘っていました。田植えの終わった水田にはチュウシャクシギやアオアシシギが餌をとっているのが確認されました。畦の影にはタシギやトウネンがみられました。農作業の軽トラックが行き交う場所ですが、よく見ると多くの野生が生息している場所であることが確認されました。

 
砂利を敷き詰めた狭い農道はコチドリの重要な営巣場所となっている。タイヤに踏まれないようにわだちとわだちの間に営巣する。巣の上を農作業の軽トラックが通過する。   けたたましくケリが鳴いている。春の河北潟では目立つ野鳥のひとつである。水田の周辺の草地や裸地、または干拓地の畑で営巣している。
     
 
チュウシャクシギが翼を休め、餌を補給する場所としても、河北潟の周辺の水田は重要である。この日は、かなりの数のシギ・チドリ類が確認された。   水田の畦にいたトウネン。この日は、その他にタシギやアオアシシギなども水田や畦から確認された。

水路や休耕田と水生植物

 今回の調査をおこなった地域の主な農業排水路は、ほとんどコンクリート化されていましたが、一部の素堀の水路では、マコモの群落などが確認されました。しかしアサザなどの浮葉植物は確認されませんでした。津幡町漕艇場横の水路では、オオミズスマシやマルガムシなどの水生昆虫が確認されましたが、かつてこの近くで確認されていた、エサキアメンボはみつけられませんでした。この水路より北側の最近整備されたコンクリート水路には、フナなどの大型の魚類は確認されましたが、植物はほとんど確認されませのでした。一方、10年以上経過した排水路にはヤナギモやエビモなどの沈水植物が確認されました。
 ところどころにある休耕田では、マツバイなどの湿性植物が確認されました。今回の調査地区で4年前に確認されていたクログワイは今回は確認できませんでした。
  宇ノ気町内日角地区では、大規模なほじょう整備工事がおこなわれていました。数年前から進められているほじょう整備により、河北潟の東側の水田はほとんどが新しい水田になっています。内日角地区は最後に残されていた場所でした。一連のほ場整備事業によりわずかに残っていた、河北潟の干拓前の水路景観や水生植物はほぼ消失しています。

 
休耕田にみられた、マツバイの群落。やわらかい緑のじゅうたんを敷きつめたような美しい植物である。   津幡町漕艇場横に埋め立てられずに残された水路の中には、ヤナギモやエビモの群落が確認された。しかし、エサキアメンボの姿は確認されなかった。
     
 
宇ノ気町内日角地区の素堀の水路。すぐ近くで大規模なほ場整備がおこなわれている。マコモの群落がみられる。数年後にはこの水路もコンクリートの生物の棲めない水路に変わるのだろうか。   水田脇の河北潟につながる排水路(写真右手)。コンクリートと矢板のの水路であるが年月が経って周りには比較的植生が育っている。しかし、水質が良くないのか、または水路内に抽水植物が生育できないためなのか、水生昆虫は少なく、浮葉植物や沈水植物も確認できなかった。
     
 
宇ノ気町内日角地区のほじょう整備工事の現場。広大な農地が掘り返され、整備されている。大規模工事のため、ここに生息していた多くの生物が絶えてしまったと思われる。   今までの水田の上に建設残土などを積み上げて水管理のしやすい水田に整備する。同時に用排水路のコンクリート化や農道の拡張がおこなわれる。