ホテイアオイに被われた西部承水路の現状

 河北潟湖沼研究所生物委員会では、河北潟と周辺水域の水草の調査を実施しています。10月20日には、西部承水路の全域調査を実施しました。この調査は春に続く2回目の調査です。春の調査では、西部承水路の下流の数カ所でアサザが点在したのを確認したのをはじめ、トチカガミは既にご紹介した古い舟の中の群落の他にも数地点で数株を確認していました。その一方、外来種のホテイアオイもわずかながら越冬しているのが確認されました。
 今回の調査では、トチカガミやアサザなどの希少植物が夏季を過ぎても残っているのか、また、夏季にどの程度ホテイアオイが繁茂したのかを把握することがひとつの目的でした。
 調査の結果は、私たちの予想を超えて深刻なものでした。ホテイアオイの増殖の勢いは凄まじく、とくに西部承水路中・上流域の蛭子橋から室の揚水橋までの約1kmの区間は水路のほとんどがホテイアオイに埋め尽くされている状態でした。この区間では、春に確認していたトチカガミを今回は見つけることはできませんでした。下流部にはわずかにトチカガミの群落を確認できましたが、アサザの姿は全区間を通しても確認することはできませんでした。
 近年の猛暑は、ホテイアオイにとっては生育に適した気候となっているようで、1株の草丈が70cmから1m程度の巨大な群落を形成し、他の浮葉性や沈水性の在来種は生息する余地がないと思われました。抽水性のマコモまでもが押され気味といった雰囲気で、まさにホテイアオイにより水路が席巻されているといった雰囲気になっています。わずか数株の越冬がこのような状況を招いていることを思うと、強力な外来種の侵入がいかに在来の生態系をかく乱するのかをまざまざと見せつけられた気がします。
 何らかのホテイアオイの対策が必要に思われます。少なくとも次期の越冬個体の除去を検討する必要がありそうです。

 
ホテイアオイの群落に埋め尽くされた西部承水路(室−西荒屋付近)、まったく隙間無く水面の全域が被われているため、他の浮葉植物や沈水植物は生育できない。数年前まではこのあたりには、トチカガミの群落がみられていた。   ホテイアオイの群落から一株を抜き出したところ。大きな株では丈が70cmを超えるものもみられた。今後、この群落のほとんどは冬に向け腐っていくため、水質の悪化が懸念される。単一の群落にもかかわらず、植食性動物の食痕がほとんどみられなかったのが印象的だった。