河北潟湖沼研究所が農家と取り組む河北潟の水辺・田んぼの生物多様性を保全するお米

生きもの元気米

生きもの元気米についてのQ&A

生きもの元気米は、ふつうと違う仕組みで作っています。

ふつうとの違い、なぜこのような取り組みをしているのか、ご説明します。

 

<目次>

Q:生きもの元気米の特徴は?

Q:なぜ田んぼ1枚ずつなの?

Q:なぜ殺虫剤と畔の除草剤を使わないことにしたのか?

Q:田んぼの生きもの調査は何のため?

Q:生きもの元気米をはじめたきっかけは?

 

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Q:生きもの元気米の特徴は?
A:生きもの元気米の特徴は3つあります。一つは、安全安心と生物多様性のために、できるだけ農薬を使わない米づくりをすることです。そのために生きもの元気米は、殺虫剤を使わないことと畔に除草剤を使わないことを決めています。
二つ目は、田んぼごとに生きもの調査をすることです。
三つ目は、水田1枚ごとに収穫された米を管理し、田んぼごとに袋詰めしていることです。

 

 

Q:なぜ田んぼ1枚ずつなの?
 田んぼ1枚ずつで生物調査を行い、収穫された米を個別に管理し、個別のパッケージにすることは、労力がかかります。それにより、多少のコストの上乗せも必要となります。それなのに、なぜ田んぼ1枚ずつにこだわるのでしょうか?
A:ひとつは、1枚ずつ管理することによって、究極のトレーサビリティを確立でき、安全性を確保することができるからです。他の田んぼと混ざっていないことにより、その米がどのようにしてつくられたのかが確実に分かります。パッケージには、田んぼの位置、栽培農家、農法、調整年月日だけでなく、すんでいる生きものなどが田んぼ毎のロット記号と袋ごとの個別番号とともに記載されています。
 ふたつめは、田んぼごとの生きものを把握することで、個々の田んぼごとに、生きものを増やすための処方箋をつくることができ、生物多様性の保全がより進むことが期待できるからです。生きものが増えること自体が、その田んぼの価値を高めることにつながり、生産農家が生物多様性の保全に取り組むモチベーションにつながります。
 三つ目は、田んぼごとの生物多様性を知ることで、より安全な農法を実施することができることです。詳細に生息する生物の情報を得られることで、天敵の利用や害虫被害の予想や雑草対策が可能とのなるため、不必要な農薬を使わない農業が展開しやすくなります。
 加えて、小さな農家にとってのメリットが考えられます。田んぼごとの管理は、小さな農家の方が取り組みやすく、田んぼの個性に合わせた丁寧な栽培をすることで、米の新しい価値づくりをするのも、生きもの元気米のひとつの目的です。田んぼ1枚ごとに生産農家が丁寧に育て、責任をもって出荷することで、安全安心と品質がより保障されます。消費者のみなさまには、こうしたシステムの維持のためのコストをご負担いただくことになりますが、NPOが仲介することで、リーズナブルな価格でのご提供が可能となっています。

 

 

Q:なぜ殺虫剤と畔の除草剤を使わないことにしたのか?
A:水田で使われる農薬には大きく分けて殺虫剤、殺菌剤、除草剤があります。殺虫剤は、稲の害虫被害を防ぐために使われるものです。もともと虫を殺すものですので、毒性があります。以前は、農薬を撒く農家にも急性中毒が起こるような強い殺虫剤が使われていました。最近は農薬の改良が進み。特定の昆虫のグループをターゲットとし、人には急性毒性を起こしにくい薬剤が開発されています。ネオニコチノイド系を含む浸透性殺虫剤(水に溶け植物の体内の隅々にまで行き渡り長期間効果が持続する薬剤)もそのひとつで、水田で使われる殺虫剤の主流となっています。人には毒性がないことがこれらの薬剤の特徴とされてきましたが、最近の科学論文では、人の神経系に障害をもたらす可能性があることが指摘されています。また、花粉を運搬するミツバチへの影響が大きいことが予想されており、ヨーロッパでは使用が禁止されたりしています。
そのような殺虫剤が田んぼで使われている大きな理由として、カメムシの被害を抑制することがあります。カメムシが発生した田んぼには、斑点米という被害粒が発生します。これは、食べても何の問題もないのですが、見た目が悪くなるために、米の等級制度により千粒中に2粒混ざっていると、等級が落ちる仕組みとなっています。被害が甚大ではない場合でも、被害粒の発生を防ぐために徹底したカメムシ防除が推奨されています。
生きもの元気米を栽培している河北潟周辺地域では、カメムシの被害は過去ほとんど発生していないにもかかわらず、予防のためにラジコンヘリによる一斉防除を含むカメムシ防除のための農薬散布が続けられています。そこで、生きもの元気米の田んぼでは、使う必要のない殺虫剤を使用しないことにしました。
二つ目の農薬である殺菌剤は、病気を予防するための薬剤です。河北潟周辺では、稲の病気が起こることは稀ですので、通常はできるだけ殺菌剤は使わないことにしています。稲の病気が発生するると広域に拡がり、被害が甚大になる場合がありますので、深刻な被害が発生したときや被害が予想されるときには、状況に応じて殺菌剤を使用することを排除していませんが、現在のところそうした状況は発生していません。
三つ目の除草剤については、畔に対して使われる除草剤と田んぼの中に使われる除草剤があり、通常は別のものです。畔には何でも枯らす強い除草剤が使われる傾向があり、発がん性が指摘されているグリホサートなども使用されることがあります。畔の部分については刈払いにより抑草が可能ですので、生きもの元気米では、畔に対しては除草剤を使わないことにしています。
一方、田んぼの中で使われる除草剤は、稲を枯らすことないように枯らす対象が絞られた除草剤が使われます。多種多様な除草剤があり、田んぼの状況により使う薬剤が選択されます。除草剤を使わなかった場合、田んぼの中に発生する雑草の管理にはたいへんな労力が必要であり、一旦雑草がはびこってしまうとコントロールが難しく、収量にも影響ができますので、生きもの元気米では、田んぼの中の除草剤の使用については、農家ごとの判断に任せています。そのため、生きもの元気米には、田んぼの中の除草剤を使用しているものと使用しないものがあります。生きもの元気米は、収穫された田んぼごとに徹底的に管理されていますので、これらの米が混ざることはありません。また、できるだけ除草剤を使わなくて済むように農法を研究して、農家に推奨する取り組みを進めています。
あらゆる殺虫剤を使わないことと、畦の除草剤を使わないことで2つのメリットがあると考えています。
ひとつは、安全性が高まるということです。先に述べたように、殺虫剤は虫を殺すための毒であり、同じ動物である人間にも毒となる可能性があります。殺虫剤は安全な米を作る上で最も使用を避けた方が良い薬剤であり、これについては全面的に使わないことにしています。畔の除草剤は広範な種に効く必要があることから、田んぼの中で使われるものより強い薬剤が使われますので、これを使用しないことは安全な米を生産する上で重要です。
二つ目は、栽培上の無理をすることなく、田んぼの生物多様性を効果的に取り戻すことができると考えられるからです。畔が適度に多様な植物に覆われていることにより、多様な生きもののすみかが生まれます。稲の害虫の天敵であるクモ類もすみやすい環境です。そのため畔が害虫の侵入を防ぐバリアーの役割を果たすことが期待できます。
殺虫剤を使わないことで、多様な小動物が増え、食物連鎖が生まれます。食物連鎖が機能することで高次の捕食者の生息が可能となり、害虫の大発生を防ぐことも期待されます。

 

 

Q:田んぼの生きもの調査は何のため?
A:生きもの元気米の取り組みは、もともと田んぼの生きものを増やすために始まったものです。そのため、田んぼの生きものの状態を知っておくことは前提条件となっています。田んぼの生きものを調べることで、水田ごとの特徴や農法による生物相への効果、生きもの元気米の生物多様性保全への効果などを知ることができます。
しかしこれだけはなく、田んぼの生きものを調べることで、さまざまな二次的なメリットがあります。
田んぼの生きものは、それぞれの田んぼをPRする上で効果的です。消費者のみなさまには、興味のある生きものを選んでいただき、その生きもののいる田んぼのファンになってもらいます。そして、お米を買うことで田んぼの生きものを増やす取り組みに参加してもらうことができます。
農家同士の田んぼ自慢が、生きものを通じてできるようになります。農家がさらに生きものを増やすためのモチベーションが生まれます。
安全安心な農法を確立する上での基礎情報となります。天敵を活用した農業、害虫被害におびえないで済む農業、生きものによる付加価値をめざす農業を追求できます。

 

 

Q:生きもの元気米を始めたきっかけは?
A:河北潟周辺の田んぼでカメムシ防除の取り組みが進み、農薬を使いすぎたせいで、生きものが少なくなってしまったからです。ライスセンターを軸とした集積、調整、流通のシステムは合理的ですが、たくさんの水田で穫れた米や複数の農家の栽培した米をひとまとめにして管理するため、規格や品質の統一が必要となります。そのため、農薬と化学肥料を使用することを前提とする品質管理が求められます。このことは、環境への大きな負荷となっています。また、安全性よりも見かけの品質が優先されます。本来、田んぼはそれぞれ少しずつ異なる性質を持っていますので、穫れる米も味も異なり個性を持っていますが、そうした米の個性は排除されてしまいます。田んぼの個性を復活させ、安全安心であり、生物多様性の高い田んぼを取り戻すことが、生きもの元気米の取り組みを始めたきっかけです。

 

 

 

生きもの元気米の購入

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