河北潟湖沼研究所が農家と取り組む河北潟の水辺・田んぼの生物多様性を保全するお米
このページでは、吉本豊さんの2017年産生きもの元気米について、以下の情報をご覧いただけます。
吉本さんは、金沢市二日市町の田んぼで、「カルテック農法」による米作りに取り組んでいます。これに加えて2014年からは「生きもの元気米」の取り組みに参加することになりました。農業が合理化していく中で、自分なりの米作りを模索してきた吉本さんにお話をうかがいました。 |
生産者:吉本 豊さん
生きもの元気米生産地:金沢市二日市町
石川県金沢市二日市町ロ49,50(約1,590平方メートル)
4月23日、代掻き中の吉本さん。 | 4月28日、田植えに向けて水が張られた田んぼの中、 長さ30センチほどのハッタミミズの姿が見えました。 |
5月4日、田植えから数日後、畦の草刈りをする吉本さん。 | 7月30日、稲穂が出ています。 |
この田んぼは、生きもの元気米4年目をむかえました。畦にはフタバムグラやヒデリコ、ウリカワなどの小さな野草が増えました。田んぼではニホンアマガエルのおたまじゃくしがみられ、そうしたカエルやケラなどを食べに、アマサギなどがたくさん飛来していました。去年に続いて、今年もハネナガイナゴがたくさんみられました。
1)昆虫スイーピング調査
2)底生生物調査
3)植物調査
*調査員 高橋奈苗(NPO法人河北潟湖沼研究所)
*生きもの調査の結果はこの下に田んぼの生きものリストとして表示しています。
同じ田んぼの2014年のリストはこちら、2015年はこちら、2016年はこちらです。
しばらくお待ちください。
確認種(年別) | ||||||
科名 | 種名 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
トクサ科 | スギナ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 |
イノモトソウ科 | ヒメミズワラビ | ○ | ||||
サトイモ科 | ウキクサ | |||||
オモダカ科 | オモダカ | ○ | ○ | 〇 | ||
アヤメ科 | ニワゼキショウ | ○ | ||||
ツユクサ科 | ツユクサ | |||||
カヤツリグサ科 | コゴメガヤツリ | ○ | ○ | 〇 | ||
カヤツリグサ | 〇 | |||||
テンツキ | 〇 | |||||
ヒデリコ | ○ | 〇 | ||||
ヒンジガヤツリ | ○ | 〇 | ||||
イネ科 | スズメノテッポウ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
メヒシバ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
イヌビエ | ○ | ○ | ||||
アゼガヤ | ○ | ○ | ○ | 〇 | ||
チクゴスズメノヒエ | ○ | |||||
ヨシ | ○ | |||||
スズメノカタビラ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
オオスズメノカタビラ | ○ | ○ | ||||
ヒエガエリ | ○ | 〇 | ||||
フシネキンエノコロ | ○ | |||||
キンポウゲ科 | タガラシ | ○ | ||||
ベンケイソウ科 | コモチマンネングサ | |||||
アカバナ科 | チョウジタデ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
マメ科 | クサネム | ○ | ○ | 〇 | ||
ヤハズソウ | ○ | |||||
シロツメクサ | ○ | ○ | 〇 | |||
トウダイグサ科 | エノキグサ | ○ | ||||
コニシキソウ | ○ | |||||
オトギリソウ科 | コケオトギリ | ○ | ○ | 〇 | ||
アブラナ科 | タネツケバナ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 |
イヌガラシ | ○ | ○ | ○ | 〇 | ||
スカシタゴボウ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
タデ科 | ヤナギタデ | ○ | ||||
ボントクタデ | ○ | |||||
ミチヤナギ | ○ | |||||
ナデシコ科 | オランダミミナグサ | ○ | 〇 | |||
スベリヒユ科 | スベリヒユ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
サクラソウ科 | ヌマトラノオ | ○ | ||||
アカネ科 | フタバムグラ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
オオバコ科 | タチイヌノフグリ | ○ | ||||
アゼナ科 | ウリクサ | 〇 | ||||
アメリカアゼナ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
アゼトウガラシ | 〇 | |||||
シソ科 | トウバナ | ○ | ||||
サギゴケ科 | トキワハゼ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 |
キク科 | アメリカセンダングサ | ○ | ○ | 〇 | ||
トキンソウ | ○ | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
タカサブロウ | 〇 | |||||
ヒメムカシヨモギ | 〇 | |||||
オオアレチノギク | ○ | 〇 | ||||
オオジシバリ | ○ | ○ | ||||
ノボロギク | ○ | |||||
オニノゲシ | ○ | 〇 | ||||
セイヨウタンポポ | ||||||
ウコギ科 | ノチドメ | ○ | ||||
22 | 25 | 21 | 23 | 31 |
ソルネット(使用時期:田植え1週間前)(使用量:1kg/10a)
*この使用量は石川県の慣行に比べて、9割以上少ない量です。
◎ネオニコチノイド系農薬不使用(苗にも使っていません)
◎ラジコンヘリによる殺虫剤の空中散布なし
◎畦の除草剤不使用
カルテック(使用量:20kg/10a)
バチルス(使用量400g/10a)
硫安(使用量:10kg/10a)
コシヒカリ
吉本さんからのメッセージ
田んぼに手間と時間をかけられた時代
田んぼを始めたのは終戦当時にさかのぼります。当時はコンバイン等の農業機器はありませんから、種籾を発芽させ、田植えを行い肥料を与え、草刈り、稲刈り、全てが手作業でした。田んぼにはそれだけの手間と時間をかけることが出来た時代でした。近年では農業は限りなく機械化され、作業は楽になりました。
いい米づくりをしたい
農業が機械化されて、合理化されることで農家の個性が失われていきました。そんな中で「いいお米作りをしたい」と考えるようになり、今から20年前にカルテック農法による米づくりを始めました。作り始めた当初はカルッテク米は買い取ってもらえず、自家用として食べるのみでしたが、最近はその味の評判を聞いて、毎年買い求めに来られる方もいます。
昔のように生きものがたくさんいる田んぼを
今年から始まった「生きもの元気米」の取り組みは、畦の除草剤を使わない、ネオニコチノイド系農薬の殺虫剤を空中散布しない、といったことから、環境に配慮したいい米作りです。昔は田んぼにオタマジャクシやマルタニシがひしめくほどいて、とくにマルタニシは食べても美味しいものでした。今ではオタマジャクシはわずかとなり、マルタニシは姿を消してしまいました。かつての思いから「生きもの元気米」への期待は大きく、ぜひ、そのような現実を知って「生きもの元気米」を食べてみてほしいと思っています。