水と農と生きものを守り・活かす 河北潟湖沼研究所

NPO法人河北潟湖沼研究所は、「とりもどそう!河北潟 泳げる湖、おいしい魚、安心して使える水」をキャッチフレーズに掲げ、活動をおこなっています。多くの方とビジョンを共有し活動を展開していきたいと思います。

 

 河北潟湖沼研究所のビジョン

 流域の森や農地に支えられた汽水生態系の復活により、 
 河北潟から豊かさを持続的に享受できる地域を目指します
 

 

 

●ビジョンの進捗状況

 

・2019年度 高木仁三郎市民科学基金の助成を受け、河北潟の再汽水化に向けた基礎研究の実施。

・河北潟の再汽水化に向けて(かほくがたvol.25-1,P1

・再汽水化に向けた調査活動の実施状況(かほくがたvol.25-2,P3

・河北潟の自然再生に関する住民アンケート(河北潟総合研究 第22巻 P27-P39かほくがたvol.26-1,P3-P7

・河北潟における再汽水化と流域保全の課題(河北潟総合研究 第23巻 P5-P12

・河北潟再汽水化プロジェクト―2019年調査結果の概略(かほくがたvol.26-2,P4-P7

 

河北潟湖沼研究所では2017年5月13日の総会において、新しいビジョンとミッションを採択いたしました。下記に本文を掲載します。( PDF概要版のパンフレットでもご覧いただけます。)

 

河北潟の再生と周辺地域の発展のために  河北潟湖沼研究所のビジョンとミッション

2017.5.13 河北潟湖沼研究所通常総会

ビジョン

 

「流域の森や農地に支えられた汽水生態系の復活により、河北潟から豊かさを持続的に享受できる地域を目指します」
 流域全体が無農薬となり、ヤマトシジミ、ウナギなどが生息する河北潟が復活し、潟漁が営まれて食卓も豊かになります。水草が増えて水も透明になり、清湖のきれいな水と自然が取り戻された流域にはいろいろな地場産業が発展しています。「河北潟」は地域に活力を与え続けます

 

ビジョンについての説明

はじめに-20年間の河北潟の環境改善の取り組みで実現できたこと・できなかったこと

干拓後の河北潟は、水が濁り、ゴミ捨て場となりつつありました。汚れたものから目をそらすように住民の河北潟に対する関心は薄れていきました。1990年代から、河北潟の問題を解決しようとするさまざまな活動が始まりました。現在までの継続的な取り組みにより、次第に多くの人々が河北潟に関心を寄せるようになり、活動の輪が拡がっています。

 外来植物に占拠された農業排水路は、根絶することができないまま、農薬の大量散布を続け死んだ水域となっていましたが、地域に守られたアサザの花が咲く水路に再生されつつあります。水面が完全に閉塞していた河北潟西部承水路も在来植生が生育する水面に変わりました。 潟と砂丘の特徴を活かして地域循環をつくる「すずめ野菜」の取り組みは、日本水大賞を受賞するなど全国的にも評価され、2市2町による外来植物堆肥の普及を図るための取り組みも行われました。

 生物多様性を守ることで米の価値を高める「生きもの元気米」の取り組みは、多くの農家の賛同を得て、河北潟を取り巻く地域の新しい農業を切り開く力を示しています。 河北潟クリーン作戦の開催は20回を超え、毎回数百名の市民が自主的に参加するイベントとして定着し、漂流ゴミはまだあるものの、かつてのようなゴミだらけの湖岸は目立たなくなり、ゴミのない河北潟が実現しつつあります。

 湖面を利用する人たちの話し合いの中から作られたボート使用時の自主ルールは、人よりも野鳥を守ることを優先した画期的なものでした。みんなで河北潟を守ることで河北潟を利用することができる、そうした地域作りの仕組みもできていきました。

 絶滅したと思われていたマルタニシの復活やアサザの自生する水路の保全活動の成功、ヨシ原の保全と活用を目指したヨシ舟づくりの定着、農業の中での積極的な生物多様保全の取り組みとその戦略化、そして河北潟を守る取り組みへの市民の自主的参加の大きなうねりがつくられたことは、この20年間の取り組みの大きな成果です。

 しかし同時に、私たちが20年前に掲げた目標である河北潟の水質改善はほとんど進んでいません。潟の湖岸の劣化は続いており、野生生物の住めるゾーンは圧倒的に少ないままで、農地の蛙もなかなか戻ってきません。部分的な自然再生が進んでも、それが人の生活や産業に還元されているとはいえません。

  こうした問題は、直面する問題への対処的な取り組みだけでは限界があることを示しており、河北潟と周辺地域の低湿地という地理的条件と現状の利用形態との根本的な矛盾を解決しない限り、真に豊かで持続可能な地域を実現することができないことを示唆しています。

  いま、自然再生を願う市民のうねりを、河北潟と周辺地域の利用のあり方の根本的な解決に生かす時が来ています。私たちは河北潟を本来の姿である汽水湖に戻すことを前提に、河北潟の水を生み出す流域全体を一から見直す新しい流域管理の形をつくることを提案します。

 

 

次の20年へ-これからの取り組み

1.再汽水化によるシジミやウナギなどの水産資源の復活と、汽水化を前提とした流域の治水管理の実現

 湖に海水が混じる汽水湖は、淡水から海産まで多種多様な生物が生息する豊かな場所です。現在、農業用水としての利用のため淡水化されている河北潟を、再び汽水湖に戻し、シジミやウナギなど豊かな水産物が漁獲可能な場とします。
農業用水については取水経路の改善を図り、農業用水基準を満たした水質を確保します。
汽水化を前提とすることにより、柔軟な治水管理をおこないます。

なぜ取り組むのか:
潟を淡水に保つために水位を標高40cmに高く調整していることは低湿地という地理的条件に真っ向から逆らう操作であるため、その管理を担う周辺地域にかなりの無理をもたらしています。また、河北潟の洪水調整池としての機能も制限しており、治水上も重大な問題を抱えています。自然流下では排出できず人為的にポンプでしか排出されないため周辺の河川の水質の悪化や生態的機能の低下がみられる河川についても、潟が汽水であることを前提として流域管理を一から見直すことで解決が図られます。

地域にもたらされる効果と展望:
河北潟は日本海とつながっています。本来、潟は海産の稚魚を育む役割を持っています。河北潟と海のつながりを再生し、汽水湖としての潟を甦らせることは海も豊かにすることにつながります。河北潟ではシジミやウナギ、水草が復活し豊かになります。そのことで、水質が改善され、水産資源の利用が可能となります。河北潟が高付加価値を持った水産資源の宝庫となります。河北潟の水質の改善は農産物のイメージアップにもつながります。
河北潟に海水を導入することにより、農業用水や農地への塩害の発生が懸念されますが、十分な調査と検討に基づき、農業用水の取水経路の改善や干拓地への浸出水対策などをおこなうことで解決を図ります。また、洪水調整のために使用可能な農地を選定・集約し、一時的な調整池として利用するとともに利用時の補償システムをつくり、より柔軟な治水対策と土地利用を進めることで災害にも強い地域を作ることが可能です。調整のための土地の一部を野生生物のための空間とすることにより、生物多様性が保全された豊かな地域が生まれます。

2.農薬を使わない農業の展開と環境保全のための流域コミュニティの形成

 流域では森林や田畑の土地利用のあり方を見直すことにより、汚濁負荷の低減が図られ、最下流にある河北潟の生物を安心して食べることができるよう、農薬を使わない農業を展開します。
河北潟の流域に住む住民が水系によって結びつき、流域全体の環境保全の意識を共有する地域コミュニティをつくります。

理由:
潟だけを捉えていては豊かな湖は復活しません。なぜなら潟を豊かにするのは、流域がもたらす栄養と清浄な水だからです。それらは流域を取り巻く森林や田畑からもたらされます。流域が健全でないと潟も豊かになりません。
健全な流域をつくるためには、汚染されてない、また栄養バランスの良い土壌が必要です。さらに地下を含めた健全な水の流れが確保されている必要があります。こうした流域の健全性は林業や農業、とりわけ水稲栽培により支えられます。
住民が河北潟の魚を食べなくなった背景には農薬の使用が影響していました。農薬や化学肥料を使うことを前提とした農業は、水質汚濁の原因ともいえます。このままでは、河北潟がたとえ汽水域になったとしても、最下流にある河北潟の生物を安心して食べることはできません。流域の人たちが河北潟につながる水系によって結びつき、水系の保全のために交流することで、安心して食べることのできる河北潟をつくることができます。

地域にもたらされる効果と展望:
健全な流域をつくる農林業が達成できれば、流域全体の農産物の価値も飛躍的に高まり、低コストで付加価値の高い持続可能な農業も展望できます。流域のつながりを強く認識して、上流から下流まできれいな水を保つ意識を共有することにより、河北潟を集約点とする流域コミュニティの形成につながります。コミュニティを通じて、河北潟をよりきれいにするための自主的で継続的な活動が生まれることも期待できます。
流域全体が健全であることは、流域の産業をアピールする上でも有効性が高いと考えられます。潟の恵みは直接の資源としてだけでなく、イメージを含めた間接的な効果をもたらします。自然と農業を活かした観光産業への展開や、環境保全を基盤とする新しい産業を生み出す土台にもなります。

3.流域保全を前提とし、河北潟を活用する新しい二次・三次産業の展開

 自然の恵み(生態系サービス)を享受できる河北潟流域を実現することで、持続的で豊かな地域の暮らしをつくります。さらに農林水産業である一次産業と、二次、三次産業を豊かな河北潟で結びつけることにより、自立した地域をつくります。

理由:
河北潟の周辺地域が経済的に自立した地域となるためには、一次産業だけでなく、二次、三次産業の新たな展開が求められます。その際、汽水湖とその水源である流域の保全を前提として、自然の恵み(生態系サービス)を享受できる形での新しい産業を展開することで地域の持続可能性が高まります。

地域にもたらされる効果と展望:
河北潟の豊かな自然、安全な土地としての魅力を展開することにより、河北潟をイメージする商品群を開発する加工業や、河北潟を舞台としたエコツアーなどのサービス業の展開が期待できます。そうした産業の隆興により、河北潟と流域の自然の経済的価値がより高まり、持続的な保全が可能となります。地域に新しい産業が生まれることで、雇用創出や定着・交流人口の拡大が見込まれます。

 

ミッション

 ビジョンの実現にむけて、河北潟湖沼研究所は課題を達成するための研究をおこない、研究成果を検証しながら方法を構築することをミッションとします。また、ビジョンの実現のためには行政機関や地域の住民、産業の役割が必須であることから、多くの関係者が連携し、役割を分担してビジョンが実現できるよう呼びかけや調整に取り組みます。

ミッション1 「潟の再汽水化と自然流下の復元」

10年後に一部再汽水化を実現し、20年後に防潮水門を撤去する。

河北潟湖沼研究所の役割/スケジュール作成、実験研究、行政・農家との協議
行政の役割/実現可能性の検討、実験エリアの協力、予算の検討、河北潟の環境教育の促進
地域の役割/意識向上のためのシンポジウムなどの開催、取水口など現場での検討会議

ミッション2 「かつての潟の水質と生物多様性に近づけるための流域管理の視点からの農薬を使わない新しい農業の確立」

10年後に生息種数を20%増やし、20年後にイトヨの生息を取り戻すとともに流域全体の農薬使用量を1割未満にする。

河北潟湖沼研究所の役割/農薬を使わない農業のすすめ方マニュアル作成、展望と効果をしめす、無農薬と農薬使用エリアの農業用排水路の生物調査
行政の役割/マニュアルや展望効果の情報普及の協力、環境保全型農業への支援、県としての無農薬農法の実験検証
地域の役割/マニュアルや展望効果の情報普及の協力、無農薬農業の連携・試行

ミッション3 「泳げる河北潟・食べられる河北潟のために内水面漁業の復活」

5年後に河北潟の内水面漁業の復活、10年後に泳げる河北潟を部分的に実現、15年後に天然ウナギ漁の復活、20年後に河北潟七珍を全世界に発信する。

  河北潟湖沼研究所の役割/過去の情報発信(食・漁)、実験エリアでの調査研究
行政の役割/過去の情報発信(食・漁)、実験エリアの提供協力、活動助成
地域の役割/過去の情報発信(食・漁)、実験エリアの提供協力、情報発信、人材提供

ミッション4 「地域産業において潟の自然環境が活かされるための河北潟ブランドの確立とエコツーリズムの展開」

5年後に地域産業のシンボルとして河北潟ブランドが複数立ち上がる。河北潟を前面に打ち出したサービス分野での産業が展開される。

河北潟湖沼研究所の役割/現在の河北潟地域商品の検証、情報収集と地域への提供、連携
行政の役割/情報発信
地域の役割/情報提供、情報発信、販売連携

ミッション5 「林業の活性化による流域全体の健全化」

 20年後にバイオマスのフローを10%増やす。

  河北潟湖沼研究所の役割/情報収集、調査研究
行政の役割/学習会、シンポジウム、人材提供、情報発信
地域の役割/学習会、シンポジウム、人材と調査地提供

ミッション6 「コミュニティによる流域管理の手法の確立」

5年後に流域の上流から下流までの地域自治体等が参加する協議会の発足、6年後に流域管理にかかるアクションプランの作成、10年後にアクションプランに基づいた自主的な流域管理体制の確立。

  河北潟湖沼研究所の役割/協議会開催、連携、計画作成と進行情報提供
行政の役割/連携、人材提供
地域の役割/連携、人材提供

ミッション

以下はPanasonic NPOサポートファンド2012年度環境分野「組織診断」助成を活用させていただきとりまとめたミッションです。

河北潟湖沼研究所のミッション

1. 河北潟の生物多様性を守り、地域振興につなげる。
2. 湖沼が将来を担う子供達の育成の場となるよう再生させる。
(冒険の場、共同の場、文化を学ぶ場、科学の目を養う場)
3. 研究所として総合的に問題をとらえ、科学的に長期ビジョンをもって地域を導く。

河北潟湖沼研究所 地域活動の心得11箇条

1.
科学の目を地域にふやすことを望みます。
2.
北陸の風土と文化、水郷の歴史をふまえて取り組みます。
3.
苦難こそ研究の鍵、地域の問題をとらえます。
4.

学問を地域に還元する社会づくりを目指します。

5.

短期でなく長期ビジョンで目標をかかげます。

6.
  • 湖沼の現状をおさえ、基礎データを蓄積します。
7.
しょ

将来を展望し、循環型のしくみを模索します。

8.

旨いものを、河北潟から生み出すことをねらいます。

9.
けん

謙虚に事実を追求し、理に叶うことを求めます。

10.
きゅう

休日に人々が潟の自然と関われる場を提供します。

11.
じょ

情報を地域から集めて生かす研究機関としてはたらきます。

 

これまでいただいたご支援について

河北潟湖沼研究所は多くの団体、企業等の皆様に支えられて活動を継続しています。

 

ドコモ市民活動団体助成(令和5年度)

LUSH RE:FUND LOCAL(令和4-5年)

エフピコ環境基金(令和3-5年度)

地球環境基金(平成26-28年度、29-31年度、令和2-4年度)

ゆうちょ エコ・コミュニケーション(令和2-3年度)

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(ご寄付いただきました)

高木仁三郎市民化学基金(平成31年)

未来につなぐふるさと基金(平成29~30年度

一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(平成25~27年度、31年度)

Panasonic NPOサポートファンド(平成24~25年度)

国際花と緑の博覧会記念協会概要(平成24年度)

トヨタ財団2011年度地域社会プログラム (平成23年度)

損保ジャパン日本興亜環境財団(平成23年度)

セブンイレブン記念財団みどりの基金(平成22年度)

ドコモ市民活動助成

 

地球環境基金

 

ゆうちょ エコ・コミュニケーション

これまでの受賞について

日本自然保護大賞(平成26年度)

生物多様性アクション大賞(平成26年度)

日本水大賞(平成24年、第14回)

いいね金沢環境活動賞(平成22年度)

 

河北潟湖沼研究所